**綿津見〜わだつみ〜**
ちょいとそこの、面をお貸し。
聞いたかい?此処に新しく人が住まわるらしいよ。
此処がどこか、解ってんのかねぇ、アッハッハ!
おや、自己紹介をするのを忘れてたよ。アタシぁ、志摩。この宿の店主をしているんだ。以後、お見知りおきを・・・。
何? そんなにちっこいのに店主だ? 笑わすな?
フン、勝手に笑ってのたれ死にな。死体は踏んで歩いてやろうか?
まぁ、そんなことァどーでもいいんだ。
実は此処、タダの宿屋じゃぁないんだわさ。
此処は裏世界を生きている奴等の、ちょっとした休息場。 何、誰もいないじゃないかだって?
そりゃ、アンタは今、表世界で生きているからさ。
・・・・・・・おっと、漸く来たようだねぇ、新人さんが。 ちょいと案内してくるから、一杯くらい飲んでおいき。
なァに、別に変なモノは入っちゃいないさ。・・・・・・・・・・・・・・アンタの世界を変えるクスリを・・・除いちゃァね。
―――そら、それを飲んだアンタも、たった今からこの裏世界の住人だ。
ようこそ、此処は裏世界と表世界を繋ぐ接点。境目。
このアタシ、お志摩様が勤める、綿津見だよ―――。