「う・・・・、・・ここは・・・・。」

真っ暗闇のなか、私は目が覚めた。辺りをきょろきょろと見渡すけど、なんにも見えない。・・・私、死んじゃったのかな・・・。

私は○○。さっきまで、島の人たちが、「ケンカじゃ〜!」って言っていたのに、今はそんな声どころか、何も聞こえない。

・・・聞こえ・・・る・・? 海の音がする・・。 波が裂かれているような音が、聞こえてくる。

ゆっくりと身体を起こし、ふらつく足元を気にしつつ近くにあった壁に手をついて、やっとこさ立ち上がる。

少し歩くごとに、キシ、キシ、と軋む音がして、自分のいる場所そのものが揺れていることに気づき、初めて自分は「船の中にいるんだ」と理解した。

とりあえず出口を探して歩いていると、何かが足首にぶつかった。

「・・・・?」

「ぐぉおお〜〜〜・・・・・ぐぉおお〜〜〜・・・・・・」

ぶつかったものは、ひげの生えたおっさんだった。・・・この船の団員だろうか・・・、と思いつつ軽くスルー。今は出口探しが先だ。

月明かりが差し込む方へ向かって歩くと、扉のようなものに手が触れる。

思い切り押すと、ギギィ――・・・・・と古びたような音を立てて、ゆっくりと扉が開いた。

 

「わぁ―・・・・・・」

外へ出ると、潮風で髪がふわぁと靡いた。冷たい潮風が頬に当たって、くすぐったい。

扉の方を見ると、少し大きめの館のような小屋が建っていた。自分は、こんな大きなところで寝てしまっていたのか・・・・。と思うと、月明かりがあってよかったと心底思った。

どれくらい大きいのだろう、と思って、小屋の方を見ながら、一歩一歩後ろへ下がっていく。と、扉から少しの距離のところで、何かにぶつかってしまい、ドテッと尻餅をついてしまった。

後ろへ振り返ると、長身の紫系色の鎧を着た、眼帯の人が立っていた。

「・・・・っ・・・!!」

眼帯の人の目が、月明かりのせいか、狼のように見えて思わずギュッと目を瞑る。初めて感じた「恐怖」だった。

「じょーちゃん、んなに怖がんなくたっていーだろぉが。 随分と寝ていたようだが・・・、身体は大丈夫でぃ?」

想像と似たような声が上から自分目掛けて降りてきて、ビクッとしながらも、コクコクと頷く。 ずっと目を瞑ったままでは失礼だし・・・・と、まだ恐怖を感じつつも、そっと目を開ける。

「なんでぃ、俺が怖ぇんでぃ?」

「!」

急に自分の顔の方へ、相手の顔が近づいてきたため驚き、後ずさってしまった。

「・・・こ・・・、わく・・・ないよ・・っ・・・・・」

「ホントかよ・・、まぁいい。 オメー、名は?」

「・・・・・○○。」

小さな声で、自分の名前を告げる。一見怖く見えてしまう彼だが、言動は・・・今のところは優しいようだ。

「俺ぁこの船を率いる『長宗我部元親』様よぉ!団員からはアニキって呼ばれてる。ちなみに、もうこの船は出ちまってる、つまりオメーの帰る場所は・・・」

「ない・・・んでしょ。・・・・私・・・・・殺すの・・・?」 彼から言われると予想した言葉を先に私の方から言ってみる。 もし殺すといわれれば、この身を海へと投げるだけ・・、覚悟は一応できている。

「殺すだぁ? んなワケねーだろぉが。」

「へ・・・っ?・・・殺さないの・・・・・?」

びっくり。てっきり殺されるとばかり思っていたのに、殺さないだなんて・・・・。でも、殺さないならどうするつもりなのだろう。

 

「じゃあ・・・・どうするの・・?」

「オメーは俺が掻っ攫った『お宝』だ。 ○○、俺の船の団員となりやがれぃ!」

命令するように、長宗我部と名乗った人は私に向かって言った。 それだけでも驚いたが、彼の言葉から、もっと驚く言葉を○○はちゃーんと聞いていた。

「『お宝』・・・? 私が・・・・・?」

「おうよ!俺の1番の宝は『団員』だからなぁ、オメーも俺の『お宝』の中に加われってんでぃ。・・・・どうだ?」

 

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